高齢化社会になり、認知症への関心が高くなるにつれ患者さんも増加傾向にあります。
「最近、もの忘れがひどくなった。認知症ではないか?」と心配され脳神経外科を受診される方が増えています。
しかし、ほとんどの方は認知症ではなく、もの忘れと判断されます。では「もの忘れ」と「認知症」の違いはなんでしょう?
朝食の例を挙げてみましょう。「朝食のメニューを忘れる」ことは誰でもあると思います。これは「もの忘れ」です。しかし「朝食を食べたことを忘れる」。これは認知症の疑いがあります。すなわち「行為そのものを忘れる」ことが問題となるのです。
人間は加齢による脳の衰えにより記憶力の低下は避けられません。
しかし反対に「忘れることができない脳」だったらどうなるでしょう?ストレスで生きていけなくなると思います。「楽しかった記憶」は残し「辛かった記憶」は忘れる。そんな素敵な脳であればよいですね。忘れることは良いことでもあるのです。
「もの忘れ」と「認知症」の判断は難しいと思います。是非ご家族と一緒に来院され、話をお聞かせください。
当院では問診、MRI以外に改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの認知機能検査を行います。
認知症の種類と特徴
① アルツハイマー型認知症
認知症の多数を占め、女性に多く、最近の出来事を忘れる特徴があります。早期の内服治療にて進行を遅らせることが出来ます。
② 脳血管性認知症
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳の病気に起因する認知症です。
③ レビー小体型認知症
男性に多く、幻覚、幻視、妄想を伴うことが多いです。
④ 前頭側頭型認知症
前頭葉、側頭葉が萎縮します。人格変化や反社会的行動が全面にでてきます。難病指定疾患です。
⑤ 若年性認知症
65歳未満の人が発症する認知症です。脳血管性認知症の割合が多いです。
⑥ 正常圧水頭症
脳室拡大により引き起こされる認知症です。手術で改善が見込めます。
⑦ 慢性硬膜下血種
脳と硬膜の間にゆっくり血液が溜まり、認知症様症状を引き起こします。
頭をぶつけて約1~2か月後に発症します。手術で改善が見込めます。